夜間列車
伊織

ハロー、ハロー
そちらは元気ですか

私はといえば
ひりひりと喉に張り付く甘い痛みが
まだ 消えません


最後の一言を言わずに
ただたゆたっていたのは
まだどこかで通じ合っているかのような
この先互いに旅に出ることなどないかのような
確信にすがっていたのです

言わないことで
こうして
夜の波に揺られながら
この瞬間も
延々と繋がっていられるのです


バニラ味の豆乳を買いました
おおよそこの時間には飲むことのない味覚です

どうか
この一日が
この夜が
終わりを迎えるのだとしても
振り返らずに手を振ったあなたは
思い出とは違う場所で
人混みを視線で追わなかった私に
少しだけ、
心で寄り添っていて欲しいのです


自由詩 夜間列車 Copyright 伊織 2012-04-03 22:36:05
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