【 ノスタルジック 】
泡沫恋歌




いつの間にか
遠くまで来てしまったと
振り返ってみたら

 ――そこは知らない街だった

懐かしい駄菓子屋さんがあった
買ったばかりのお菓子を
口にくわえた子どもたちが
お店の前でメンコや縄とびをして
賑やかに遊んでいる

夕暮れが近づくと
遠くの方からお豆腐屋さんの
プオォー プオォー
どこか調子外れな
ラッパの音が聴こえてくる

遊び疲れて帰る道すがら
家々の軒からは
夕餉の匂いも漂ってきて
あ、カレーライスだ!
こっちの家はすき焼きか? 
いいなぁー

よその家の晩ごはんの
おかずを鼻で当てたりしていたら
グゥーーー
お腹が大きく鳴った

 ――早く帰ろう。わたしのお家へ

友情 根性 勝利

そんな言葉が大好きだった
テレビ漫画の主人公たちの
不器用な生きざまを
カッコイイと懸命に声援を贈っていた
あの頃の子どもたち

戦争 高度成長期 オイルショック

いろんな試練があったけど
ぜんぶ乗り越えてきたから
私たちの未来は
もっと輝いているだろうと
そう思っていた

努力すれば報われる
頑張れば認められる
幸せに向かって邁進していると
信じて疑わなかった
どんなに苦しい時でも
夢は捨てなかった

 ――そんな時代を、私たちは歩いてきた

ああ、恋しいなあ
もう巻き戻しせない
昔日の【 昭和 】という時代

もう一度振り返ったら
想い出がいっぱい詰まった
あの家が見えてきた
玄関のガラス戸を
ガラッと開けて

「ただいま」
と言ったら
「お帰りなさい」
って応えてくれるかな?




自由詩 【 ノスタルジック 】 Copyright 泡沫恋歌 2012-04-02 10:55:24
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