路上で飲むカフェオレ
Utatane/Nayuta

先日、人生で2回目の路上ライブを行った。
まだ録音出来ていない曲を中心にして
草津駅前と石山駅前のロータリーで約20分間のライブ。
寒さとの格闘。そして自分との葛藤。




笑い声は聞こえたど歓声は聞こえなかった。
白い目は見えたけど輝く目は見えなかった。




唯一「頑張って下さい」が響いた。
40代前後の、子連れの主婦だった。
僕がアンプを準備している時に
彼女は僕にその言葉を渡してくれた。
その後、彼女は僕のパフォーマンスを見ることなく
子供を連れて百貨店の方向へと歩いていった。
何気ない一言だったのだと思う。
だけど彼女が何気なく僕に渡してくれた言葉が
僕の背負った不安を僅かながら降ろしてくれた。


僕は精一杯歌った。
歌詞を間違え、声がかすれた。
努力しているとは決して言えないけど
僕は数少ない必死になれる瞬間を愛していた。




笑い声は聞こえたど歓声は聞こえなかった。
白い目は見えたけど輝く目は見えなかった。




結局、誰一人として足を止めてくれなかった。
刃物よりも鋭利な実力不足が僕に痛みを走らせた。
だけどなぜか嬉しかった。


路上ライブを終えてから自販機でカフェオレを買った。
あたりにあった薄汚れた段差に腰を掛けて
おもむろにプルトップを引いて僕はカフェオレを一口啜った。




苦かった。




手に握った缶をよく見てみると
"UCC BLACK 無糖"と書いてあった。




路上で飲むカフェオレはちょっぴり苦い。



自由詩 路上で飲むカフェオレ Copyright Utatane/Nayuta 2012-03-30 09:31:46
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