川をわたる
はるな
尼崎を超える頃に日付は変わる
川をわたる鳥のむれも
一日分の年を取る
吊り革に群がる背広を押しのけて
酸素のうすい車輛で
どうにか息をしている
神様
今日が正しくなくても
息をしている
雑踏を乗り越え
小さなライブハウスから声が届く
かすかな
声
踊れずにたちつくして
帰りたかった
ただ
帰りたかった
ネオンを食べ尽くして
恋愛にも飽き飽きして
届く声に
疲弊してしまって
帰りたかった
神様
それでも
川をわたる
川をわたる
川をわたる
川をわたる
一日ぶんの年を取り
尼崎を
こえる頃