あの日の手紙は、ふいに
宮岡絵美

懐かしい人から
久しぶりに連絡があった
元気にしていますかと
メッセージが来た
それは突然のメッセージで
私をじんわりと嬉しくさせた

過去の私がやって来て
机に腰を下ろした
あの頃は今よりまだ色んな意味で若くて
世界を裸足で走っている感じがした
未完成なままの視野、感情
その他諸々が
モノクロームの写真に
雑多に収まっている
ふとそれが取り出される瞬間が訪れるとは
予想していなくて
私は少し慌てた
あの日々が
しまってあった箱から
色彩を持ってあふれ出す
書けなかった
あの日の手紙の事を思い出す

あなたが私を覚えていてくれたので
私があの日に居たことがわかる
それは不思議な現実である
本当にあの日に居たのだろうかと
もう一度考えて
やはり居たのだろうと
そう考えて
小さく肩をすくめて
また淡々と日常に戻ってゆく
突然のメッセージによって
小さな灯がともったこの日々に

二度と帰らないこの時間の流れは
銀河系に確かに存在しているのだと
もう一度考えて
陽の暮れた部屋に
青白く光るパソコンの画面を開いて
あなたに 元気にしていますと
少し長文の
メッセージを送る


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自由詩 あの日の手紙は、ふいに Copyright 宮岡絵美 2012-03-27 13:04:23
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