尊厳は人を手放しはしない
ただのみきや
心の中では土足で暮らし
裸足で世界を歩き回る
ぼくは人間
月のように出たり隠れたり
雨になりまた雲になる
そんな人間
あなたもまた一個の太陽
少しずつ周りを温めながら
ゆっくりと
萎んで行く
人間なのだ
欲したものは すべて
焼き尽くしてしまうから
誰を抱くこともままならず
孤独で
悲しい
鬼火のような
人間なのだ
遠くから手をあぶり
暖をとる
消え入る熾火を
惜しみ
目を細め
灰になれば目もくれない
そう人間は
すっかり消え去った後も
誰かの記憶や
何かの記録の中に
変色したまま
形跡を残してしまう
しかし熱力学の法則のように
いのちは無意味に消失しない
何の自覚も
悟りも
誇りもないままで
生にも死にも意味を有する
荒れ果ててもなお
いのちに輝く
青のひと雫
この地球のように