幸福談
小川 葉



今日は午後から息子を連れて、秋田県児童会館みらいあへ。館内全体が遊び場になっていて、息子もたいへん楽しそうだった。また来ようねと、汗だくになって笑った。

プラネタリウムも見てきた。平原綾香の歌とナレーションによる上映で、息子も口をあんぐり開けて、宇宙の旅を楽しんでいるようだった。

上映中、あたりから子供の、ちきゅうってなに?という質問に答える母親の声と、父親のいびきの音。お父さんお疲れだね。と思いながら、わたしも息子のたくさんの質問に答えていた。ぼくあの星みたことあるよ、とあらわれたのが土星。ああ、あの輪っかのある星ね。今度望遠鏡買って、本物見てみようか。

帰り道、息子があんまり楽しそうなので、可愛くなって、大好きな寿司でも食べさせたくなり、以前より息子が高く評価していた、地元のスーパーマーケット、ジェイマルエーの寿司を買い、また、父のポケットマネーは889円で、これを一円単位で消化しなければ次の予算に響くという役人根性により、息子もよしきた!と、iPod touchの、計算機アプリを起動した。

まず息子の寿司を399円、それから息子が喉が乾いたというのでファンタ98円、父がとんかつ食いてえなと198円、太麺堂々137円、そうして残り、58円で買えるものは、と探したら、息子が、お父さん、サンマ食べなよと、58円。

なんと奇跡的に889円、ぴったり消化し、息子とハイタッチして、レジに並び、レジの人に、多分ちょうどあると思います、と言って、小銭払って、二人息を呑み待ってると、ちょうど889円ございますと、また息子と目を合わせてハイタッチ、感動、わけのわからぬ喜びを噛みしめて、父は涙すら禁じ得なかったのである。

そうして、その寿司も、今や息子が食べ尽くし、とんかつも二切れほどいただいて、あとは妻に託し、さんまはいらないと言われたけれど、なんだか持て余してしまい、酒を飲んでいる。ああ、今日も幸せがあった。また、あったのだ。まだ、あるのだと、来週も児童会館に行く約束を、息子とした。



散文(批評随筆小説等) 幸福談 Copyright 小川 葉 2012-03-25 20:43:27
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