思い出のなかへ
吉岡ペペロ



恋人の心変わりを感じていた頃、辞表を出してくる社員がいた。

彼らはぼくをひどく傷つけた。

ひとのこころなんて分からないものだ。

思い返してみればそんなそぶりもあった。

そぶりかあ・・・・

人間嫌いがますます進んでゆく。

心変わりした恋人も、辞表を出してきた社員も、その後ちがう生き物になってしまった。

彼らとの未来はもうない。

同じ人類ではなくなってしまった。

ぼくは彼らの不幸を願った。

そしてその感情の毒にやられて苦しんだ。

やがてぼくはちがうものに心を向けていった。

それはひとではなかった。

神でもなかった。

記憶への同化とでも言えばいいのか・・・・

フォークナーの言葉を思い出す。

人が戻ろうとするのは場所ではない。

場所は、もう、そこに存在する必要すらない。

人が戻ろうとするのは、自分の思い出のなかへなのだ。


携帯写真+詩 思い出のなかへ Copyright 吉岡ペペロ 2012-03-23 21:48:02
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