確定申告
HAL
すべての仕事を終えてしまうと
ぼくは無職同然かのようになる
次に仕事の依頼が来る当てもないのに
電話かメールが明日は来ると想い込む
ついこの前もレギュラーの仕事が打ち切られた
何故かの理由を担当に訊ねたら経費削減の一言
今年も相変わらずだけど稼ぎは最低
手間暇かけた時間は膨大だったけど
確定申告でまた同じことを言われた
これで生活してるんですか
これで生活できるんですか
と呆れる税務署の担当の声
所得の誤魔化しを疑う視線
そうしたいとぼくの心の声
でもこれで生活してきたんだ
でもこれで暮らしてきたんだ
お前に言われる筋合いはない
語気が強くなりそうな言葉を
必死で顔色変えずに抑え込む
でもそいつはまた訊ねて来る
生活保護者の毎月の支給額が
幾らかを知ってますかと問う
知らないし知りたくもないと想う
そいつはぼくに1円単位まで言う
少し心に動揺は覚えながらも
悟られないように平然を装う
国が滅びるのも無理はないと
言ってはならないことに沈黙
確かによく近所でも眼がいったよ
コンビニのアルバイト募集とかや
電柱に貼られた清掃員募集とかに
でもそれを選んだら
ぼくが愛しんできた
多くを犠牲にし得た
自由な時間が労働に
殺されてしまうはず
その時間を護る為と言っていい
無理難題な依頼も受けてきたし
寝る暇も惜しんで締切は守った
何かそれで文句があるのかい
搾り取れるなら一滴の雫まで
搾り取ろうとする木っ端役人
好いかいお前らの高い給料は
誰が払っていると思っている
との口先まで出た言葉をグッと呑み込む
握り拳が殴ってやれに逆らっても入る力
でも警察にきっと通報され逮捕されるし
どうせ馬の耳に念仏な事は分かってるし
負け犬の遠吠えに聞こえたりしたら
唯一護り続けたぼくの誇りが涙する