Happy Birthday To You
HAL
きみはいま幸せか
辛いとは想わないか
淋しいとは想うことはないか
ない?
嘘だろう
きみは独りぼっちだ
きみには誰からの誕生日の贈り物も
Birthday Cardも届かない
きみは小さな頃から
幸せな誕生日なんて一度もなかったろう
でも望んでもいないのに
約束を交わした覚えもないのに
誕生日は一年に一度
好むと好まざるとに関わらず
望まぬきみの元にやってくる
きみは久しく見なかった
悪夢を見ただろう
よりによって60歳を迎えたその夜に
いま午前3時40分
誰もが眠っている時間なのに
きみは目醒め
朝までどうしようかと悩んでいる
それが幸せもののすることかい
それが淋しくないもののすることかい
きみはいま悪夢から逃れたが
大きな喪失感を抱いていることを
誰も知らない きみしか知らない
Happy Birthday To You
違うね その祝福の言葉は
Unhappy Birthday To You
それがいまのきみに
いちばんふさわしい言葉であることは
きみ自身がいちばん分かっているはずだ
Unhappy Birthday To You
Unhappy Birthday To You
それがいまのきみにふさわしい
幸福か不幸かは別にしてね
もう一度眠ることだ
そうすればいまきみを包んでいる喪失感は
眼が醒めたとき
去っているかも知れない
でもそう考えるほど
きみはオプティミストでないことも
きみがいちばんよく知っている
Unhappy Birthday To You
2012年3月22日
60歳と云う還暦を迎えたきみは
きみに向って言えるかも知れない
もう一度眠り給え
こんどは悪い夢を見ないことを願いつつ
もしそれができたら
きみはいつものような
強がりのきみを取り戻せるだろう
Happy Birthday To You
ほんとうに嫌な言葉だろうね
でもHappy Birthday To You
とにかくきみは60歳まで生き延びた
おめでとうと云う言葉をきみは何かから
受け取ってもいいんじゃないだろうか