そんなときラブソング
吉岡ペペロ

商談フロアは明るかった

外光のような明るさはすべてLEDだった

設計課長が施工後の保証を求めて来た

外からはこの社屋の外壁工事の音がしていた

私たちはその仕事を商品の納入だけだと思っていた

商品の施工についてはお客様の仕事の範疇ではないのか

私たちが施工後の保証をすれば

施工まで請け負ってしまったことになるのではないか

設計課長が施工のリスクについて意見を求めて来る

商談テーブルには仕様書が各人に置かれ

ながれるふりをした沈黙が停止したままだった

閉ざされた白いブラインドを見つめた

誠実さを見せてゆくしかないよな、と思ったときだった

外壁の足組にひとがいるのだろう

そこからケイタイの着メロがうっすらと聞こえてきた

古本屋でよくかかっている類いの

たたみかけるようなラブソングだった







自由詩 そんなときラブソング Copyright 吉岡ペペロ 2012-03-20 12:10:09
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