チューニング リハビリ レストア
竜門勇気


塩漬けの豚肉を噛んで
その合間にビールを飲む

暮らしは歯車の間で粉々になる
粉々はグリスで練られて
出来損ないのドーナツみたいな姿
午後の闇の間でしばらくもがいて
怒りで角を生やすと
どこからか憤りがやってきて
狂ったように埃を巻き上げ
全ての埃が奪われると
歯車が新しくそこにある

歯車が空を見上げると
摩り切れた歯車が
まるで出来損ないのドーナツみたいな姿で
怒りの鋼に落ちてくる
誰かが誰かを褒めている
誰かが誰かを怒鳴り殺している
歯車が歯車を回している
歯車が歯車を回している
歯車が歯車を壊している
歯車が歯車を壊している

鋭い歯で分厚い歯を
分厚い歯で鋭い歯を
回している
壊している

塩漬けの豚肉を噛んで
その曖昧さに眠る
ビールを飲んで
その加速に摩擦を流す

出口が無いことに慣れて
むしろ出口を探さないために器用になっていく
僕はもう地獄に落ちても
カンダタの蜘蛛の糸を見て見ぬふりできるぐらいに強くなった
救いは僕を壊す
救いは何かを壊してやってくる

塩漬けの豚肉を噛む
この国がおかしいんじゃない
この世界がおかしいんじゃない
僕も君もおかしい
僕と君以外の奴らもみんなおかしい


自由詩 チューニング リハビリ レストア Copyright 竜門勇気 2012-03-20 08:48:40
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