荒地
HAL

去っていったものは
はじめから出逢ったことのないものと
想えばいいこと

背をむけたものは
はじめから背だけを見せていたと
想えばいいこと

そしてぼくは幼い頃に戻るだけ
独りぼっちだった幼い頃に戻るだけ

それくらいは受け入れる覚悟は持っている
そうでなければ独りぼっちで生きてはいけない

それが己の定めなら
ただ抗わず受け入れるだけのこと
天にまで逆らうほどにぼくは傲慢じゃない

ぼくに与えられた世界が荒地でしかなかっても
ぼくは喜んでその荒地を歩きつづいていく
その荒地に入り込んでくるものは殺す意思で追い払う

冷たい奴だと
心ない奴だと
言うものは言わせておけばいいだけのこと

そんな誹謗を跳ね返すぐらいの
心の壁は持っている
ぼくは見てくれよりも柔じゃない

こんな命でよいのなら
飢えた獣にくれてやる
それぐらいの決意を持って
ぼくは荒地を生きていく

誰独りいない荒地を命果てるまで
ぼくはぼくは生きていく




作者より
この詩はぼくがもっとも敬愛する詩人
田村隆一氏が創刊された《荒地》を
標題として無断で借用しました。


自由詩 荒地 Copyright HAL 2012-03-18 20:33:50
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