荒地
HAL
去っていったものは
はじめから出逢ったことのないものと
想えばいいこと
背をむけたものは
はじめから背だけを見せていたと
想えばいいこと
そしてぼくは幼い頃に戻るだけ
独りぼっちだった幼い頃に戻るだけ
それくらいは受け入れる覚悟は持っている
そうでなければ独りぼっちで生きてはいけない
それが己の定めなら
ただ抗わず受け入れるだけのこと
天にまで逆らうほどにぼくは傲慢じゃない
ぼくに与えられた世界が荒地でしかなかっても
ぼくは喜んでその荒地を歩きつづいていく
その荒地に入り込んでくるものは殺す意思で追い払う
冷たい奴だと
心ない奴だと
言うものは言わせておけばいいだけのこと
そんな誹謗を跳ね返すぐらいの
心の壁は持っている
ぼくは見てくれよりも柔じゃない
こんな命でよいのなら
飢えた獣にくれてやる
それぐらいの決意を持って
ぼくは荒地を生きていく
誰独りいない荒地を命果てるまで
ぼくはぼくは生きていく
作者より
この詩はぼくがもっとも敬愛する詩人
田村隆一氏が創刊された《荒地》を
標題として無断で借用しました。