どんぶりバイオレンス(DV)
灘 修二

社長はおれを鼻で使う
今日は何の食べ物を入れるのか
おれは口をあんぐりあけているだけ
スープを入れられても、じぶんは飲めない
社長がうまそうにすするのを聞いているだけ
おれは社長が食うのを見て、いつも腹をすかせている

アチッ。
熱湯を入れられた
おれはがまんする
なんにもいわずにがまんする
といってもおれはしゃべれない
腹のそこがにえくりかえる
といってもおれには腹がない

こぼれる!
といっても 社長は聞かない
山のように銭を盛って、数えている
おれを見ないで、銭だけみている
用が済むとほうりだされる
ガチッ。
流し場のタイルにぶつけられた
おれはがまんする
頭骸骨骨折。
といってもおれには頭がない

ガツーン。
社長が、怒っている
おれをぶさいくだと言って怒っている
おれはつるつるのうまれたままの姿で社長に仕えてきた
なにをいまさら
といっても、いつも洗われているばかりで、やつれたおれが悪いのか

社長は1分きざみで忙しい
ものは食べるが、味はわからない
おれのこともわからない
あせって手をすべらせた
チャリーン。

これで、おれは一生を終える
土に還れて幸せだ

どんぶりバイオレンス
ガチッ。


自由詩 どんぶりバイオレンス(DV) Copyright 灘 修二 2012-03-16 19:04:16
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