春とひげ
石田とわ




            横たわる男のひげは春を待つ
            閉じられた青白いまぶたの奥で
            なにを夢にみるのだろうか
            弥生の風はまだ冷たくて
            横たえた手足も冷えるだろう
            だがもうすぐ風は緑に染まる
            たくさんの木々に新芽が息吹き
            蕾はふくらみ柔らかな日差しが
            その青白いまぶたさえも包むだろう
            春の光眩しくて閉じてはいられまい
            ひげもぐんぐんのびるだろう
            からだじゅうが喜びに満ちるだろう    
            さぁ、ひげの剃りあとも青々と
            そのからだで緑の風を受けてくれ
            
            








自由詩 春とひげ Copyright 石田とわ 2012-03-15 02:23:05
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