銀色の時
つむ

胸の中央の縫合痕から
たらたらと零れるなまぬるい銀の水
銀色のバケツにそれを掬いだして
部屋中に並べたら 足の踏み場もなくなった。

音もなく流れ続ける温い銀の水
部屋中に並べられた純銀バケツから
ちらつく雪のようなひかりが壁いっぱい乱反射し
やがて体の質量を超える銀の水
胸元へ、そして首筋まで上がる水面
銀の水中で藻のようにたゆたう髪
銀色に揺らぐ部屋の中心
銀色に立つさざ波の底
銀色にきらめく指先でそっと触れる
銀色に濡れる胸の縫合痕

あたたかい水の底で目をつぶり
水門の閉じる時刻を待つ
永い永い銀色の時。


自由詩 銀色の時 Copyright つむ 2012-03-15 01:52:10
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