7月、8月、9月(黒)
木立 悟





忘れた夢の方角へ
偽りの指を 手のひらを置く
のりしろ 空白
潮の熱さ


ふかみどり
喉の奥の
ふかみどり
車輪の行方
消えてゆく影


象亀から 布に落ちて
どれほど進み
どれほど留まる
海辺に寄せる
海辺


水に立つ影
背から崩れ
土でも火でもない色になり
夜に撒かれ
夜に沈む


雨樋の時間
晴れを見ない左目
石の葉と壁
午後を午後に迎える裾


誰もいない道を
群集の眩暈が通り過ぎ
陽は昼より高く
影は影を呑み
影を呑み


水の光が
水の光を殴りつづける
嫌われながら空を抱く
人工の泉
おまえの頬と
おまえの蛇をつなぐもの


白衣の子が
海へ帰る暮れ
飛べない鳥と 数の単位
触れる 沈む
指に 沈む


紙の工作を濡らしたくないのに
退いても退いても水は追ってくる
硝子の内の針
目と目のあいだに振り切れる


目覚めたあとも
無人の夢はつづいてゆく
片目を置いてきたからか
朝昼夜を分けて歩めない


文も宛もない封筒を咥え
鴉は尖塔を飛び越える
花と炎に埋もれた水を
贖いの海を飛び越える































自由詩 7月、8月、9月(黒) Copyright 木立 悟 2012-03-15 00:36:21
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