1/2 A Loaf
ホロウ・シカエルボク
煮つめられた、ような
まよなかのにおいを
くたびれた寝床で嗅ぐ、遠いこめかみの痛み、ディスプレイの照明を、受けとめ続けたせい
おとなしい雨の日の
波打ちぎわみたいな間隔で
車が
走り過ぎる
不手際な命が飯を食らって
それが小腸でこわばる、タブーを隠した口もとみたいに
くらがり
未発見の
古代生物の
骨を
隠した一部の地層を思わせる
タイトなグラデーション
のくらがり
骨
俺は
骨のことを思う
発掘されない一組の骨格、それは
未来を孕んだ過去、すなわち遺伝子
誰かの手によって、暴かれるために、そこにいるのか、それとも、ただ単に、死んでいる、だけなのか?
意味なんて、結局
求めるか求めないか
それだけしかないもんだ、昨日削除した書きかけの詩は
誰かにとっては、ふるえるほどの羅列だったかもしれない、だけど
それは少なくとも
昨日の時点では
俺の詩ではなかった、それだけのことさ、ただ、それだけの
そう、昨日
マザー・テレサの
言葉を読んだよ、なあ
本当に、伝えたい、ことは
言葉に出来ることじゃ、きっと、ダメなんだ
話そうとしちゃ、ダメだよ、話そうとしちゃ
そこにあるものがみんな、どっかへ消えてしまうから
勘違いしてるんだ、あらゆる言葉は
それじゃ言えないことを、追いかけるためにあるんだぜ、すべてを話そうとしたら、きっと、ダメなんだ
伝えようとする、やつら、みんな
素人さ
とつぜん、ほのおの如く、見えない河原で魚が跳ねる、水切りの石みたいにみじかく二度
現実におこったのにまぼろしのようだ、それはハローという詩のようなものさ、それはハローという詩のようなものなんだ
フルボリュームで流れるエクリプスがとても近づいて遠ざかる、ごらん、あれは変換されたデジタル信号に過ぎない、なのに
くらがりの河原を跳ねる魚よりずっとリアルに息づいていないか?そうさ、騙されてんのさ、そうに違いないさ、だけど
求めるか求めないかしかないって、求めるか求めないかしかないってさっき俺言っただろ、どちらかを選んでたしかめていくしかない
はたかれたみたいに今日がまた過ぎる、消化器官のこわばりと渇いた喉、なにかを啜ればうるおうだろうか?カーテンレールの隙間からすべりこんで天井を舐めていくひかりを数えていた、ひかりは、一瞬のいのちのように、見えて、ああ…
カーン、と、頭のなかで音がして、これはまるで葬儀のようだ、俺のなかにあるなにかが致命的な欠陥を飲みこんでしまった、そう、あのひかりは、あのひかりは、葬列だ、その列の先頭には、いらなくなった俺のたましいのひとかけらがある、せめて、微笑んで見送ろう、俺は、生きることをえらんだのだから…