冷たい雨
……とある蛙


真夜中のコンビニの中
街は冷たい雨が降っている
どこかへ行くあての無い二人が
仕事を終えて会う約束の場所

外はどこも冷たい雨が降り
二人の居場所はどこにも無い
ただ暗闇の中にぼぉーと光る
コンビニエンスストアーだけが
約束の場所

おまえは場末の酒場のホステスで
俺は売れないソングライター
買うものなどほとんど無いが
俺は週刊誌に目を落としている
約束の時間がくると
俺の背中をおまえがつつく

ガラスドア越しの冷たい雨
曇りガラスに映るおまえの笑顔
本当にお前が愛おしい
これから帰るアパートの部屋
温かいものも無く ここで買ったおでんだけが温かい

どれだけこんな生活を続けたら
どれだけこんな所で働いたら
どれだけこんな場所に居続けたら
幸せがやってくるのだろう

俺達はただの捨て猫同士で
冷たい雨が降り止むのを待つしかない。
俺達はただ身を寄せ合って温め合い
冷たい雨が降り止むのを待つしかない

この冷たい雨が降り止んだら
二人してこの街を出て行こう

この冷たい雨が降り止んだら
二人してこの街を出て行こう

誰も知らない暖かい街へ 


自由詩 冷たい雨 Copyright ……とある蛙 2012-03-14 17:47:08
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