擬態する虚無
青土よし
彼は私の苦しみそのもの
彼に関して用いられる、
言葉
色彩
音律
それらすべてが
彼と
彼の愛のために。
自己表現なんて、無いのです。
世界観なんて、必要ありません。
口ずさまれうる旋律は
よろこびも
かなしみも
ただ彼ひとりの傍に。
永遠が欲しいなら、
私があげよう。
永遠なる孤独を。
孤独はあなたを手離さない。
(あの日、あの葡萄色に彩られた朝、やわらかな白いシーツの中で、あなたは目を醒ました。自分でも驚愕する程、澄み切った脳内と、無垢な身体が、そこで37℃の熱を発している。そして、あなたは、あろうことか、孤独から手を離した!泣きながら…泣きながら…)
私が言葉を話す時
そこにはいつも彼が居る。
その美しさに於いては、
何が善で
何が悪なのか
なんてことは、取り立てて気にするべき問題では無く、
醜いとされるもの
愚かとされること
が、ただ優しきこどもとして
聖母の両腕に包まれるのを
許される。
特異であろうとも
奇妙であろうとも
受け取られる寂寞は
確かな形を持って
涙は流さずとも
理解はすぐそこに。
そうして彼は
無垢なる天使として
今宵も聖母の腕の中。