プラス1の女
はだいろ
確定申告の書類を出しに、
税務署まで行った。
確定申告なんて、したことなかったけれど、
マンションを買うのに、
親からお金をもらったので、
贈与税の非課税なんとかのために、
確定申告をしなければいけないと、
マンションの営業の人が教えてくれた。
マンションの営業の、女性は、
きっともう、50代だろうけれど、
とてもいい人だ。
美人だし、おしゃれだし、ちょっとおっちょこちょいだけど。
結局ぼくは、マンションの印象よりも、
その人の印象で、
決めたようなものだ。
これは賛否両論(だれの意見も求められてはいないが)だろうが、
ぼくは、
やっぱりいい人がいいものを売るのだと信じたいところがある。
例えば、このあいだ、
妻と一緒に、
行列のできる洋菓子屋さんに行ってみた。
まだまだ寒かった午後、
行列に30分も並んでいたら、
その店のマスターみたいな人が出てきて、
行列の整理をしているドアボーイに向かって、
ちゃんと挨拶をするの、
と恐ろしい顔で凄んでいたのを見た。
店内、いろんなお菓子が並んでいたけれど、
店の人たちの笑顔も態度も、
なんだか恐怖心からの強制みたいに思えてしまった。
ケーキを妻といっしょに、
帰って楽しみに食べたけれど、
あまり感動しなかった。
やっぱり、
あの、マスターを好きになれなかったからかもしれない。
あと1週間もすれば、
引っ越して、
妻と一緒に暮らす事になる。
だから、今週いっぱいで、この部屋ともお別れ。
いったい、
(もちろん、妻と付き合う前からだけど)
何人、デリの女の子を呼んで遊んだことだろう。
最初は抵抗もあったが、
いまはもう思い出をなぞるように、
あと1回だけ、
もう二度と遊ぶことはなくなるのだから、
そう思ってお金を下し、
いつものお店で、女の子を呼んだ。
ほんとうにいい子に会えたのは、
その店も含めて、
3〜4店くらいである。
やってきた女の子は、
とても可愛い子だったので、
と言っても、
ぼくは経験として、デリの女の子に恋することはない、
ということがよくわかってしまったから、
落ち着いてまったりと遊ぶことができた。
ヤフーオークションで、
買いたかったポスターやレコードを、
今週中に、まとめて買ってしまおうと思う。
そして、
あと何人か、女の子を呼んで、
それから廃品回収屋さんを呼んで、
ぼくはこの部屋とお別れすることになる。
もちろん、いい人がいい歌を歌うとは限らないし、
いい人がいい政治をするとも限らない。
ただぼくは、
そうだったらいいな、と思う。
ひどいぼくだけど。
ほんとうは、そうとは限らない、世の中だけど。