牢獄の中の自由
灘 修二

切り立った崖の上で咲いている
スミレのために
俺は立ち上がった

国境で銃を構えて365日
誰も来ない
守るべきものは何一つなく
攻撃することばかり
はらわたの命令にしたがって
海だか空だかわからない青に向かって
空砲を撃つ

銃声があたりの沈黙をさらに濃くすると
俺は絶望に輪をかけて
また、あたり構わず連射する
顔のない人々が通りすぎる
倒れたのは俺だ

コンドルが俺の頭をつかみ、
高度1万メートルまで浮かび上がる
むなしい抵抗をする

味方の蠅のパイロットが空中戦を戦い
敗れて、落ちていく
一条の線を引いて
落ちていく
どこまでも落ちていく

夜の静寂が広がり
俺の内部は星雲に占領された


自由詩 牢獄の中の自由 Copyright 灘 修二 2012-03-13 10:30:40
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