私の情緒に侵入して欲しい
青土よし
1
しかし人生はあまりに冗長で
ただ生きているというだけのことすら
難儀に感じられるというのに、
人を愛している余力も余裕も
無い。
それでもなお、
愛せずにおれぬと叫ぶなら
呼吸を停止させるほかあるまい。
疲れた。
眠い。
今日はもう、
なんにもしたくない。
一生なんにも
したくない。
誰にも会わず
話すこと無く
貸すのも、
返すのも、
もうおしまいにしないか。
この手をひっこめよう。
そうして
さようならをしよう。
2
言葉を失った帰り道でも
彼の身体に触れたかった。
今日はよく晴れた金曜日で
いまはうららかな昼下がりだ。
絵画的うつくしさ、
神話的やさしさ、
そんなもので満たされている。
泣くよりわらえ、
それがいちばん合っている。
景色に調和すること、
自を殺さずに他を生かせ。
するべきことは決まっている。
生きるのだ。
うつくしく生きるのだ。
生きることしか、
死にぞこないの私が出来ることは無い。
それをやめた時、
すべての色彩は画面から遠退いて
莫大な死が浮上する。
ノイズ
ノイズ
ノイズ
歩く度にちいさくなる身体
を感じていますか?
思い思いの言葉は
文法を完全に無視している。
それでも立派に調和している。
うん、それはいい。
それがいい。
しなやかな肉体を作り出すため
の運動。
確かにすべてがうまくいっていた頃、
私はうんと走っていた。
私はうんと伸びやかであった。
縮こまった精神を引き延ばして
脳みそのほつれをほどこう。
滞った血液をうつくしく循環させよう。
行けばわかるだろう、
そこに彼が居るかどうかは。
これらの言葉たちだって
いずれ不自然になる。
なにものにも当てはまることをせず
安らかな調和を脱ぎ捨てる。
今日の気持ちは今日だけのもの。
今日の言葉は今日だけに似合う。
調和、あらゆるくるしみの果て。
そっと触れるように生きる。
歩くのだ。
ありがとう。