冬の遊び
ふるる

小学生から高校途中まで、住んでいた家の庭の思い出です。
果樹や花木が色々植えてありましたが、梅は2本ありました。2月のまだ寒い頃につぼみがふくらみ始め、もうすぐ春が来ることを教えてくれます。黒い木肌に雪がつもり、それでもこごえずにいる白い梅の花芽。とてもさわやかな香りがするので好きでした。梅の頃には、沈丁花も咲き始めます。華やかで、美人な香りです。花も小さくて集まっていて肉厚で、きらきらしていて、雪の結晶という感じです。水仙は、咲いたり咲かなかったりしましたが、すらっとした葉っぱや白と黄色のコントラストがきれいでした。

冬の朝は氷が張るので、バケツに水を入れておいて、できた氷を思い切り踏み石にぶつけて叩き割るのが楽しかったです。四方八方に砕け散る氷は、朝日を浴びてきらきらと光ります。大きな氷の欠片は、木の下につないである飼い犬に向かって蹴飛ばしたりします。土にできた霜柱をごっそりひっくり返して割ってみたり、踏んでざくざくいう音を聞いたり。井戸水のホースが凍っているのでメキメキと折り曲げて水が出るようにしたり、冬の朝は色んな音がします。

関東圏ではめったに降らない雪が降ったら、積もったばかりのまっさらなところを縦横無尽に歩き回って足跡をつけます。「すべてをけがしてやる!はははは!」という意気込みです。手形や顔形もつけます。それから、せっせと雪だるまを作ります。地面に雪玉をころがして大きくしたら、きれいな雪を貼り付けて、なでなでして、なめらかな丸い玉にします。目玉はみかんです。ぎゅうぎゅうに押し込んでも、いつも、すぐ落ちてしまいました。小枝をだるまの頭にたくさん挿して髪の毛にします。耳やひげをくっつけてウサギや猫も作ります。ブロックを作ってつんで、小さな階段を作ったり、椅子を作ったり。プリンカップで抜いて、雪のプリン。バケツで抜いて、ケーキ。ケーキはビー玉をのせ、小枝のロウソクを立て、できあがりです。小さい雪だるまをたくさん作って、門の前に並べたりもします。塀や、ポストのひさしの上にも。20個くらい並べて眺めると、「やった!やったよ!」という気持ちになります。

木の下に立って幹をゆすると、鳥がばっと飛び立ち、さらさら雪が落ちてくるのも面白いです。猫や鳥の足跡をたどってみたり。犬を庭に放して、走ってくるのを狙って雪球をぶつけたりしました。当てるのは難しかった。誘われて、姉と雪合戦をしますが、大抵私が泣いて終わりでした。
おままごとのおちゃわんに雪を盛って、かき氷シロップをかけて食べたりしました。

雪が降っている時は、玄関先の石段に座って雪の降る音を聞きました。音が吸い取られていって、静かで静かで、魂がすーと抜けてしまうような、夢の中にいるような気分になります。すると急に恐ろしくなって、家の中へ逃げ帰ります。冷たくて静かな怖い場所と、暖かくてのん気な家の中。ドア一枚を隔てたこの両極端。怖いけど、何度でもやってしまいます。


散文(批評随筆小説等) 冬の遊び Copyright ふるる 2012-03-10 16:02:39
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