お魚の夜
梅昆布茶
じつと待っていた感情が対象とともにやってきてこころをつくる
こころは波うちまた対象も変化して感情も泡立つ
月夜の魚は狂おしくかつまた慌ただしく波間に飛び散る月の光を追うている
島影は遠く仄白く浮かび世界はその下に沈んでいる
気持ち良い調べが全身麻酔のように貫いて
それでも月の光を追うている
深い海の底でぷちぷちした卵から生まれたそういった魚が
幾千幾万となく泳ぎ上がってきて
海面は銀色のさざめきに満ちてそれは何処かへ
拡散しようと飛び跳ねかつまた群れをなして
星ぼしの奔流とも見えて収束しつつ潜り込んでゆく
認識という魚は五感を通じてこころへとおよぎつく
その過程でこの魚達は変化しつづける流れのままに
生滅して僕にやはり認識という海を
こころの波打ち際を
月明かりの風景としてみせてもくれる
たぶんそれを僕は詩にしたりするのかもしれないのだ