月光
……とある蛙




闇夜の風景の中
自分が生まれて初めて見た月光は
生家の隣の空き地に聳える
土手の上の屋敷の樹々
梢の葉の茂る隙間から
サーチライトのように照らされた
幼い自分の心臓を鷲掴みにする
意思の籠もった光だった。
祖母の背中越しから
ぼんやりとした記憶の彼方の鮮烈な光
そのまま恐怖に震えた自分は
光から免れようと
祖母の背にしがみつき
長い間気を失っていた。

どこから本当の自分が始まったのか
気づいてみれば
帰り道に月を仰いでいる老人がいる



自由詩 月光 Copyright ……とある蛙 2012-03-08 12:35:49
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