3×六=?
アラガイs


壱=「以下にして空白を埋めようか等と考えている」

雲のないその日、たまたまペリカンの集団が飛来したのよ
かわいそうに、塗り直したばかりの白壁に小さな足跡をつけたのは野良猫ではなかったの
犯人にされてしまったからにはパソコンに弁解を書き残したわ
まさかアイツが壁に沿って横向きに歩くなんて、誰が考えるかしらね。
あたまの中は真っ白なのに、髪の毛ばかり掻き毟っているから喉仏のねじが灰色に巻かれちゃったのよ

弐=「強迫観念者及び誇大妄想に係わる玉葱の論考」

中途半端なストレスは中途半端にものを考えれば治ると中途半端な田舎に移ったのがよくなかった
いつもは夢をみないような夫婦がたまたま同じ夢をみてしまった事からその不幸は始まった。
日ノ出に躊躇う坊主の影も消えれば覆面から解放された構図は
あまりに静かな夜景が男に武器を与え、覆面を外した男から武器を取り上げられた女は互いに家の周囲を半分に割って、右側から左側へとゆっくり円を描くように反復しながら歩き周り様子を窺っている
という、そんな夢の落ち処は台所に置かれた輪切り玉葱の発汗で目が覚めた。

参=「所要につき訪問販売の一切は是に該当す」

朝方になるときまってアパートは得体の知れない大きな振動に揺れる
共に暮らす女二人のカーテンは開いたことがない
花粉症の時期になると宗教の勧誘が増えてくる
この辺りの縄張りは猫が締めている
土壌の中には野良犬の死体が何匹も埋まっている
ご近所のお葬式には情報の伝達屋が紛れ込んでいるらしい
販売員らしき姿がひとりまたひとりと入れ替わる
同時に、女だと思っていた住人はどうやら男だった 。


「応えてほしい、あなたは今日も言葉を綴り、わたしは明日も言葉を綴るのかしら」 。










自由詩 3×六=? Copyright アラガイs 2012-03-08 08:12:07
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