Another Setting
木立 悟
松の葉を踏む
鴉が
踏む
影の波
何の影か
わからない波
半分の鏡に
すべてが映ることの歪み
弦の音
空に昇る昼
ただ昼のままの昼
昼の昼
放る 放る
返すものなく
放る
渦のはじまりの指
白より早い
黒
けだものの足音を
真昼は吸う
湿気の羽
巨きいもの さらにひらめくもの
街の終わりに立つ
小さく丸いひかり
ざくざくと
冬は耕す
水は明るく
踏まれても笑み
ほどこしは無く
あがないは無く
考える機械が考えを捨て
原のまんなかで踊るとき
裸の笑みや 笑みの輪は
たとえ何本もの槍に貫かれても
笑っているにちがいない
笑っているにちがいない