Crosswind/Crossroad(契りのひと)
恋月 ぴの
風の吹き抜ける交差点で
あなたは待つ
約束は必ず果たされると信じて
ひたすら待つ
待ち続ける
そして見上げれば雲
春の雲
おぼろげで奥ゆかしくありながら
したたかさをも予感させて
※
生きるもの
いずれは死に至るように
≪約束は果たされる≫
だとするならば
地の果てに投げ捨てた一枚の銀貨
あれは
ふたりで過ごした日々の記憶
軋む鎖骨の痛みに逆らい伸ばした上腕に感じたあなたのぬくもり
※
あなたは見やる
時の鼓動
果たされる約束の放つほのかな輝き
そして、あなたは気付く
或いは
とうに気付いていた
愛憎で築き上げた螺旋形のいただきでは
阿鼻
叫喚にも似た
暗闇と
黒羊たちの悲嘆にくれた眼差し
※
ひとは孤独
それ故に立ち止まり
佇み
果たされる約束のみぎわで
委ねる
自らのいのち
そして吹き抜ける一陣の春風に乗り
かつて愛したひとの面影をたどる