890km
AquArium
ささやかな光の片隅で
続いている白黒の国体道路
わたしは独り、
ファインダーを覗いて
色を探してたんだ
裸眼でも見つけられないものが
遠くでは見つかるような錯覚
人波、なんてないけど
見つめる先に君は、
必要ない なくていいんだ
揺られるバス
途中下車をしてしまいそうな朝
もはやインプットされただけの
手足が痛い、救えるのは
誰でもなく わたし
いつしか冷たい風になる
百道浜の砂が固まっていく
足跡が、残せない、残らない
此処で消えてしまう
夢が、浚われてしまう
--------------------棄てるわけではない
ただそれだけことを
理解してと願うのは、
エゴ、ただのエゴ
決して棄てるわけではない--------------------
いつでも温かいなんてただの甘え
苦虫を噛む、後味はとても悪い
でも此処で生まれたものも
確かにあるということ
泣き崩れた昭和通り
徘徊しては逃避を望んだ
僅かな抵抗と一握りの希望が
上人橋通りで行き来して
わたしを惑わせていたね、
夜明けを知らせるのは いつだって、現実
いつしか薄れかけた
あの夏の、あの夜の、
憤りが襲った感覚を
忘れてはいけない、忘れてはならない
わたしは笑うんだ、遠くで
確かな誇りをもって
覗けば世界に色が足されていく、
高級なレンズに頼らなくても
感じられる、研ぎ澄まされた感性
欲しい 全身が震えるほどに
--------------------棄てるんだ本当は
この街も差し延べられた手も
窓から眺める大濠公園も
お気に入りのBARも
視線も安定も、ぜんぶ--------------------
理想的な生き方
有名進学校、国立大学、総合職
引き換えに残る焦燥感
切れないシャッター
合わないピント
それが答え、
大切なものの軸
生み出されない世界、
わたしの創りあげる唯一の
自分らしさの場所
奪われる前に
行かなければならない、
早く、少しでも早く
890kmを越えて、ほら
押し寄せるよ波が
多重露光されていく
やがて真っ黒になる、
親指で巻き取っていく錆びついた記憶
わたしのタイミングで、
生きるために、生きるために
--------------------棄てるわけではない
でもしがみつく背中が
わたしの鉛に変わる
潔く棄てなければならない--------------------