砂時計
nonya


厚手のコートを脱いだら
するららと
時間が落ちて
あなたに一歩近づく

梢の蕾がふくらんだら
するりりと
時間が落ちて
あなたに半歩近づく

約束の日は近くて遠い
ほんのり焦げた胸に
いつのまにか宿った砂時計

降り積もっていく時間は
わずかに湿り気を帯びて
いくつもの溜息を醗酵させていた


こ と り


待ち合わせの
カリヨン時計の下で
あなたの姿を見つけた瞬間に
反転する砂時計

あなたで満たされた時間は
砂糖菓子の甘さで
崩れ落ちていく

あなたの無邪気なえくぼから
モデラートのテンポで
零れ落ちていく

改札口の向こうの
色褪せた人混みの中に
あなたの姿が溶け込んだ瞬間に
反転する砂時計


こ と り


砂時計を何度も何度も
ひっくり返して
あなたとわたしの季節は
繰り返されて

次に逢うのは
おそらく満開の桜の下

柔らかな影を寄せ合って
ふるふらと
落ちていく時間に
しがみつこう




自由詩 砂時計 Copyright nonya 2012-03-03 13:19:18
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