砂時計
nonya
厚手のコートを脱いだら
するららと
時間が落ちて
あなたに一歩近づく
梢の蕾がふくらんだら
するりりと
時間が落ちて
あなたに半歩近づく
約束の日は近くて遠い
ほんのり焦げた胸に
いつのまにか宿った砂時計
降り積もっていく時間は
わずかに湿り気を帯びて
いくつもの溜息を醗酵させていた
こ と り
待ち合わせの
カリヨン時計の下で
あなたの姿を見つけた瞬間に
反転する砂時計
あなたで満たされた時間は
砂糖菓子の甘さで
崩れ落ちていく
あなたの無邪気なえくぼから
モデラートのテンポで
零れ落ちていく
改札口の向こうの
色褪せた人混みの中に
あなたの姿が溶け込んだ瞬間に
反転する砂時計
こ と り
砂時計を何度も何度も
ひっくり返して
あなたとわたしの季節は
繰り返されて
次に逢うのは
おそらく満開の桜の下
柔らかな影を寄せ合って
ふるふらと
落ちていく時間に
しがみつこう