誰か背中を押してくれ / 冷たい交差点
beebee





雨と風が一緒に顔にかかって
少し髪を濡らす交差点に
ぼくは独り君を想い立っているよ

君がいつもしていたリュックの色は薄い緑色で
不思議なくらいどんな色のシャツにも合っていたね
いつも髪の毛が少し肩先に流れて
風を呼んでいたね
いま君は暖かい部屋の中から
この冷たい白い空を見ているのだろうか

君の口笛は一曲だけなので
僕は春の暖かさと一緒じゃなきゃ思い出せない
それともダイダイ色の暖かい秋空の下か
君が摘んだ野草は鋭利な葉先で
君の指の腹を傷つけた
君は傷口にそっと口を付けた

僕を見て微笑む君の不思議な笑いに
僕はいつも夢中になった
いったいどういう意味があったのかい
あの不思議な笑いには

いまは寂しい雨風の中で独り立っている交差点

見上げれば君は向こう側にいて
信号待ちをしているはず
見えない姿を追いながら僕は
静かに渡り始める

跳ねをを上げて走り去る自動車たち
親子連れの二つの傘が揺れながらダンスを踊る

通り過ぎる世界に
もう君はいないんだ
どうか僕の背中を押してくれ
この道を渡りきるまで
冷たい雨風よ
僕を濡らせばいい
冷たく濡らせばいいんだ




自由詩 誰か背中を押してくれ / 冷たい交差点 Copyright beebee 2012-03-03 01:11:40縦
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