春の手記
ミネ

腐敗したものの中から立ち上がる春が臭う
ねじれながらクロトンの葉がまだらに燃え
枝の根元に寄生した洋ランも
咲くのを待ちわびるように根を伸ばし続ける

雨が降ればミミズがあわあわと這い
家の白い壁はますます黒ずむ

季節は折り返し
人を連れてきては連れ去っていく
隠すわけでも奪うわけでもなく
運命のようにただ手をにぎって

いつになく青々としながら
清純な新しい香りをまとい
今年も季節が空をよじのぼる
その下でわたしたちは
ひっそりと接吻をする
崩れおちる雲や太陽をささえて

イソヒヨドリが執拗に鳩を攻撃し
間の抜けた風が通りぬける
墓やトタンの上にはびこる朝顔をまねて
死臭の中からあふれだす春が見える


自由詩 春の手記 Copyright ミネ 2012-03-02 11:38:13
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