君が在るということ
宮岡絵美

短い詩をうたったのに満たされないのは
私の謎のせい
その謎は確かに
暮らしにまみれた泥の底で
息切れしそうに脈打ってあるのだけれど
同時に広がる外の世界にも
存在として在る気がするのです
(そうだね、と君は少し肩をすくめた)

小さな子どもが泣いている
(それは感情の睦び合い、なのだ)
君は囁く風の名を知っているだろうか
(もう偶像にしてしまおうよ
その方がどれだけ楽だか知れやしない)

瞬くひかりを
あの人に、あの人に

一羽の雲雀が急降下する
その一瞬のダイナミクスに魅かれて涙がでる
(脳の原始的な部分が雲雀の動きと
相対しあっているのだろうか
雲雀の脳の構造を思う 私と似て非なるばかりの)
空の遠くで鳴いていた雲雀がほんの数秒間で
目の前を過ぎていくまでに移動するのを
信じられない気持ちで眺める
その一瞬の心の動きの理由をとらえようとして
雲雀の動きを追っていたとき
視界の端にV字に隊列を組んだ鳥(種はわからない)が
羽ばたき飛び去るのが見えた
私はまたその一群れに魅かれた
(人の興味の在り方にパターンがあるとしたら)

苦しいからうたうというのをやめてみようか
もうどうしようもなく生きているのがもうどうしようも
なく苦しい苦しいからうたう私なのだけれど
(その向こうには何があるのか知りたくはなかったか)

遥かな空の青
その一瞬のきらめきの為にうたってみようか
(それは白く閃光を放つ両翼である)

遠くを見つめるイメージのまま目を瞑れば
君はいるのだから
確かに君はこの世界に

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自由詩 君が在るということ Copyright 宮岡絵美 2012-03-01 15:56:06
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