顔なしのひと
恋月 ぴの

ひとりで生きられる
生きられない

それとも、ひとりで生きざるを得ない

わたしってどれなんだろうね




無責任ってわけじゃないけど
ちょうど
満員電車のなかで誰かに寄りかかってしまうような
仕方ないじゃんと思っているところがあって

大人らしさを自覚しなくちゃなんて
朝起きる度に思うのだけど

何かしら困りごとが起こる度
誰彼となく手助けを求めていたりする

それでも喉元過ぎれば知らん顔

我ながら身勝手すぎるとは思うのだけど




頭の禿げあがった男のひと
意外に家事とか苦にしないようで

塵ひとつ落ちてない片付けられた部屋は女っけなし

ひとり寝の夜は寂しくないのかな
というか
そんな思いは不必要なぐらい男を感じさせる匂いしなくて

お気に入りの楽曲とかを解説するのに熱心で
ブラウスからのぞく下着の色には無関心だったりする




やっぱ身勝手なんだよね

ひとりじゃ生きられないとしても
誰にも心を開いたりはしないし

なんか話し相手欲しいなと思ったときには
そばには誰もいなかったりする

寂しがりやでもあるんだよね

寄りかかりあいながら生きるのが「ひと」ってことらしいけど
わたしの寄りかかるひとにはなぜかしら顔がなくて

自販機みたいに同じ言葉を繰り返すだけ

でも
それが心地よいなと思うわたしも確かにいたりして
わたし自身の顔だっていらないんだけど

あんたも消えちゃえば

鏡に映る顔に向かってつぶやいた






自由詩 顔なしのひと Copyright 恋月 ぴの 2012-02-27 19:06:44縦
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