無理なお願い
salco

やがて再び北風の中
道端のネコヤナギの蕾のように
やさしい春の指先が頬を撫でようと
いつか一つの曲がり角の先
私を包み、光へ導くような
誰もが期待する運命が待っていようと
もうこれ以上一つだって
年を取りたくないのだ

知恵など要らない
今よりましな住まいも
衣服も舌も要らない
外に築く財産も
内に蓄える財宝も
愛しい人も
家族も要らない

夏の光に三秒で引き締まる肌の艶
機関銃のように言葉を吐き出す脳
こんな些細な快感さえ失ってしまった
軽はずみで愚かな心を胸に抱いたまま
この電信柱の手前に足を止めて
出生届さえ破り捨ててしまいたい
私はもうこれ以上一つだって
年を取りたくない

孤独なら負いきれない程
背負い込んでいい
どんな苦痛も労苦も払いきれない程
与えられても構わない
苦悩だろうが悲嘆だろうが
「死に至る病」だろうが
頭がぶち割れる程詰め込んでいい
何をされようと構わない
ただ、年を取る事だけ免除して下さい


自由詩 無理なお願い Copyright salco 2012-02-26 23:44:36
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