『うみのながさ』
あおい満月

うみのながさを感じていると
わたしがその手につつまれているような
不安定な安堵に満ちてくる

うみのながさを感じていると
こころがひとつ
深いほうへと滑っていく

うみのながさは
わたしから
私をうばっていく
やがてわたしは
どこにでもあふれ
どこにでもしみだしていく

ありとあらゆる制限から流れ出して
鍵さえもたちきってしまうだろう
うみのながさのように
そうして流れ出して
はだかになり
見つめているものさえも
意識から消えてしまえば
わたしは永遠の海になる

そうしてただただ、
腕のなかの
あなたを求めるだろう
あなたのなかにいる
わたしを探して

つつまれるうみのながさから
のがれるすべは
わからないけれど

うみのながさに扉を立てて
塞き止めてしまえば
朝の街も穏やかに流れる


うみのながさを
うみのながさを

知りながらわすれてしまえば
もう、
鏡のあらそいはいらない


                      二〇一二年二月八日(水)


自由詩 『うみのながさ』 Copyright あおい満月 2012-02-26 09:05:41
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