表面張力
nonya


昨夜の口喧嘩の
後始末もそこそこに
降り止まない雨の中へ
ぼんやり歩き出す

昨日より重い靴底
視界に覆い被さる雨傘
押し黙ったまま濡れる自転車
舗道にすがりつく安売りのチラシ

胸の内側で結露した感情は
何処にも流れ落ちていかない
拭い切れない疼きは
全身をじっくり侵していく

欲しいのは
表面張力

深い森の
木洩れ日の下の
大きな葉っぱの上を
転がる水玉

こだわることなく
きゅるりと丸まって
ためらうことなく
ひゅらると落ちていく
感情の水玉

車のクラクションが
束の間の夢想を打ち破る
胸の内側をひとすじ
感情に似た泥水が
のっそりと伝い落ちる

思わず吐いた溜息の方向へ
仕方なく歩き出す
今日はまだ
始まったばかり




自由詩 表面張力 Copyright nonya 2012-02-25 11:24:41
notebook Home 戻る