ダイアリー
haniwa

x月x日

東海道を歩ききってみせるときみは意気込んで名古屋の自宅を出発した。
東京方面に向かうのか、大阪方面に向かうのか、誰も聞いてないという。

x月x日

空から大きな落石。隕石かと思われたが、それはどこかの子供が蔵王山の頂上から遠投したものだった。
留守中のきみのベランダに落ち、干したままだったシーツに穴をあけた。

x月x日

灰皿が満杯になる。特に意味はなく、今日の夕食で使った人参の頭の部分をそこに飾る。

x月x日

晴れの日が続くが洗濯機が壊れてしまった。しかたないので浴槽にお湯をためて手洗いをする。
ワイシャツは思いのほかパリッと仕上がり、汚れもきちんと落ちた。

x月x日

きみの部屋のサボテンに初めての花が咲いた。

x月x日

久しぶりに雨が降ったのであたまの中がミント味になった。
そろそろ梅雨に入るのかもしれない。せっかく洗濯機が直ったのに。

x月x日

電力会社がきみの部屋への送電を止めた。
次はガス、最後に水道。
取り残された金魚もそろそろ死ぬだろう。
きみは泣くだろうか。

x月x日

きみは歩いている。
歩き続けるうちに、その理由を忘れてゆく。

x月x日

暑さにやられて倒れていたら
知らないおじさんがアイスをくれた。
顔は好みじゃなかったけどお礼のキスをした。

x月x日

歩き続ける。
道路なんてとうの昔に消えた。

x月x日

きみの部屋に手紙が届いた。
僕はそれをきみの故郷に転送して、
枯れたサボテンと、死んだ金魚を
枯れ葉が積もる庭の土に埋めた。

x月x日


自由詩 ダイアリー Copyright haniwa 2012-02-22 23:02:34
notebook Home 戻る