222
馬野ミキ

1、むしゃくしゃしてやった
2、大恐竜展の破壊の思い出
3、あの娘はトラック
4、踊り場にて
5、職安通りコンチネンタル
6、GoJapanese
7、ゆめのある人
8、あの娘はトップブリーダー
9、人生で必要なことはすべて地球で学んで死んだ
10、昨日頭のおかしな人に追いかけられた
11、悲惨な事件の終わり
12、本番はなく練習ばかりです
13、すべての泥棒
14、あの娘はゴミ人間
15、スーパーマーケットの裏手でラッキーなことが起きた
16、占い師を殺せ
17、爆発する中華
18、連続
19、バーサーカー




これは
架空のハードコアパンクバンドの唯一のアルバムで
アメリカで500枚プレスされた
タイトルとバンド名はなく
のちの発売元の社長になる
当時、練馬鑑別所で壁を見てずっと立っていた田中市朗(現:ノーマルレコード社長)によって
ホワイトアルバムと名付けられそうになったが
それはビートルズであるじゃないかということで
当時、渋谷でメールオペレーターをしていた詐欺師の山上克彦(現:ノーマルレコード専務)によって
アルバム最後の曲からタイトルをとり「バーサーカー」と名付けられた
このアルバムはインディーズシーンで結局800枚のセールスを叩き出した
ネットの普及とノーマルレコードのおおらかな管理体制により、海賊版は放置された
その大きな原因の一つにはまず、
誰も著作権について知らなかったということが挙げられる




唯一の生き残りメンバーであるドラムスの太田ちゃんは現在、精神障害者たちが集う作業所で箸の袋詰め作業をしている
大田ちゃんは吹き出物の上についた綿毛をぬぐいながら開口一番にこう話してくれた
躁の女とセックスするのは最高であると。
それっきり太田ちゃんは口をつぐんだ
唇の両脇には汚いあぶくがたまっていた
おやつのカールがほっぺに少しついていたし
30秒に一度の割合でちんこを触っていた
その時、私はこう思った
太田ちゃんは底辺の人間だと。





その後私は
ネットで自主的なファンクラブサイトを開いていた小山田英恵(現:ヤクルトにてパート勤務)と
都下の喫茶店で会うことができた
その時間は数分であったかも知れないし、2、3日だったのかも知れない
まず俺は時計を持っていなかったし
持っていたとしても第一見なかった
夜であろうが昼であろうが没頭すれば「今」しかないわけだから
時間にとらわれる必要はない
カチカチと機械が勝手に進行するのならば俺はそんなものはアスファルトに叩きつけて古物商に売ることも忘れただろう
故に、取材は難航をたどった
俺は待ち合わせは苦痛だ




それでも俺は
私のルポライター生命をかけリハビリを続けた
まず、カレンダーを見ることから始めた
なるほど、いまは西暦2012年なのか
そして2月22日なのだな。
おお2が並んでいるな
だが本当に今が2012年なのか
誰がそんなことを決めたのか
俺も西暦を信じる必要があるのか




そういうことを押入れでかんがえているうちに
私は欝をこじらせた
遠くで犬が吠えていて季節が変わった
今は病院のベッドにいる
そうして私の信じる幻のバンドについて
あれこれ空想をめぐらせている














自由詩 222 Copyright 馬野ミキ 2012-02-22 11:27:19
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