それは繰り返すことの美しさに似ていた
中山 マキ
今、私の目の前に存在するネジを巻いたら
昨日西永福の駅で私に舌打ちをした中年と
再び会えるのだろうか。
もしそれが叶うのであれば
私は迷うことなくネジを巻いて
その中年の右頬目掛けて拳を振り上げ
周囲の人間が振り返る前に
またネジを巻き戻して今の世界に戻ってくるよ。
復讐は色とりどりで
器用に人間を駄目にするけれど
とても甘美ということを皆知ってる。
嗚呼、だけれどどれだけの人々の精神世界で
私は罵倒され、握りつぶされているのだろう。
ひたすら歩き続ける井の頭通りを
浜田山の境を僅かに逸れて
僕と君の違いってやつを
セレブリティというものを形にして
私は毎日のように探しているんだ。
正しさや間違いなんてどうでもよくて
自分だけが肯定出来るなら肯定し続ける
それを青春と誰かが呼ぶように
私は決まったように眠って起きる。
それはそれは繰り返すことの美しさによく似ていて
確実に人間を盲目にするけれど
とても安全ということを皆知ってる。
嗚呼、だけれどどれだけの人々が精神世界で
何かを生み出す力を、信じ続けていられるのだろう。