修理不能
HAL

先月エアコンが壊れた
次の日炊飯器が壊れた
次の次の日Macが壊れた
次の次の次の日掃除機が壊れた
次の次の次の次の日冷蔵庫が壊れた

でもね
いちばん最初に壊れたのは
ぼくだったんだよ
壊れたものを直すために
残った全財産を遣って
修理屋を捜しまくったよ

だけど
やっと見つけた修理屋は
修理不能ですとぼくに告げた
いまはもうディジタルで出来てるから
もうアナログ部品がないんだってさ
余りにぼくが古すぎて

だから
ぼくは壊れた心のままで
生きている存在してる
誰にも気づかれない様にね

だから
ぼくは誰とも逢わない
同情なんかされたら惨めじゃないか
でも同情がひとを傷つける行為だと
知ってるひとは想う以上に少ないんだ

同情って簡単だからね
誰にでも出来るし
責任が問われることもない

だから
ぼくは部屋に引き蘢る
電話にも出ない
チャイムが鳴っても出ない
それって別に悪いことじゃないだろ
ぼくはどんな不善も為してはいない
ぼくはどんな犯罪も犯してはいない

ぼくは間違わずに生きているって
誰にでも胸を張って言えるよ
ただ人交わりが面倒だから
沈黙と独りぼっちを選んだだけだよ


自由詩 修理不能 Copyright HAL 2012-02-21 09:27:29
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