灯火

逆立ちをして血が上り続けてしまったことを悔やんでいた男たちは鉄錆になく

暮れとも明けともつかない空は鈍色だ。鉄骨の喉元を明け透けにして、鉛筆の芯みたいにうらやましい胚内をうらんで、せせこましくもない空は呼吸する。空っぽの心臓に気泡が入り込んだとき、コンクリート色の女たちが顔をゆがめながら燃える町を構成する。

血痕はおびただしく伸び続けていく。
シーツの端から端まで、
封蝋の男たちは灰を塗ったくってあえいでいる、
いちばんてっぺん=下だったと気づいたひとりが墜落する、
と墜落者はひっくり返って女になる、
とビルの階段が少し延びた。

ドドメ色のほのおが灰皿みたいなこの世界で宙ぶらりんになってお化粧をしているやつらの脳味噌の中でぐるぐる渦巻いている
耳から這いだした寄生虫は色が混ざりすぎているからもう灰色にしか見えなくてついばんだ恥骨の方から漏れ出しはじめている
巨大な顔、ユーグレナ運動するビル型女の群は□□に向かっている

血豆のできたさよならをともしびにして二三度ばかり叫んだ馬鹿はアルカリ溶液に浸された魂
無数の空中が乱立し、電車の連結部分染みた細胞分裂、残された灰、お洋服、供花、カーテン

燃えかすの中央部分は心臓している。繋ぎ続けるシナプスが意味を組み替えていく。灰色のチョコレートがいつしか溶けてもう一度固まって、死体みたいにやわらくてかたくなるまで逆立ちをしていろ


自由詩 灯火 Copyright  2012-02-20 22:11:35
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