春が来る
瀬崎 虎彦

もう涙は掛け値なしに流せないので
からだではなく こころが不自由
ほのかな明かりのみえる夜の余白に
やせた色彩の春がさまよっている

空気の中に弱弱しく感じられる
感傷的な気持ちの余韻を丸石にして組んだ
防波堤が点描された海であかるい

目の奥で春が崩れていく
何度この季節を迎えても
慣れることができない

ジャイロを狂わせ 不安かきたて
ガラス戸を軋ませ 植物を獰猛にし
春が殺戮の凱旋におとずれる


自由詩 春が来る Copyright 瀬崎 虎彦 2012-02-20 08:28:52
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