アズ タイム GOズ バイ
salco

テーマ/SF(サージカル・フィクション)

 こないだのGO

雪国まいたけのGO(*)は
思慮を醸した声音が好ましかった
がついこの間出ていたGOは
顔面が何か不自然で
目元がいやにぱっちりしており
皮下に妙な凹凸があった
これは数年前まで見られなかった
彼の持つ「若やぎ」とは異質の
「わたくしの姉」の相貌に共通している
 何か
ではなかったか


細胞老化は中年期の表層に於いて
余剰物は下垂
      を辿る
不足分は陥没 


彼の場合は痩躯であるから
肌老化が溝と頬肉の削げを形成する
 筈だ
身体機能は食事や運動によって
一定範囲の維持なら可能だが
表情筋を鍛錬したところで
皮膚細胞が維持されるわけではない
元来、両者に機能的連動性はないのだ
筋肉は運動の為にあり
皮膚は体組織を覆う為にある


かつてトップアイドルだったGOは
しかし脳の悪い人では決してなく
一芸受験などなかった時代
確かどっかに合格するほどだった
 のに芸能人として一体
何に怯えているというのか
過去の自己イメージに追いすがる修正は
重ねるほど過去の実像から離れて行く、
この現代医学の限界を知らぬではなかろうに


 女としては私も
充填の必要に迫られた時には
そこは押さえて置きたい
どのみち時流とは遠心分離
ジジババの参入余地は無い
嗚呼しかし
キースやトム・ウェイツの荒野が好きだ!



(*)注釈 GO は咽頭に力を入れて半音上げ、[ou]にアクセントを
      つけて発音下さい。




おまけ

 ミステリアス シスターズ

「明日は?」
「空いてますわ」
「シャンパンはまだなの?」
「あ、はい。今日はこれで…」
「…何なの、これは」
「モエ・エ・シャンドンです」
「美化さん!」
「ごめんなさい、ドンピンを買いたかったのですが…」
「シルク、いえ裸にこぼれたわ。ペリエとお塩を持って来て!」
「はい、ただ今!」

      ❁

「わたくし達はフォーミュラーレーサーではないのよ、美化さん」
「はい」
「シャンパンの判別基準もクラスだけよ? これは揺るぎないの」
「はい、ですが経済状況が…」
「キャビアは?」
「はい、ここに」
「わたくしはアセトラも食べられないというの?」
「申し訳ありません。でも、トンブリよりはましかと」
「それって庭ぼうきの実でしょう? 一緒にしないでちょうだい」
「はい、申し訳ありません」
「おいしくないのよセヴルーガは。何とかならないの?」
「なにぶん、近頃は外タレが来ないので…」
「ガガさんしか来ないわね」
「ええ」
「あの娘ではわたくし達にコンプレックスを抱く筈ね。あら、
 そう言えば、グッドルッキング・ガイズはどうしたの?」
「はい、ドヤ街のレストハウスに宿泊を」
「まあ…。せめてビジネスホテルにしてあげなさい」
「ですから仕事が」
「仕事仕事って、無粋だわ美化さん。わたくし達のはセルフ
 プロデュースじゃないの」
「はぁ。でも、相手あってのセルフプロデュースですから」
「でもでもって、最近いやに楯突くわねあなた」
「申し訳ありません」

      ❁

「あのー、一体いつまで続くのでしょう」
「持ち逃げのこと?」 
「いえ、このユニットがいつまで続くのかと」
「わたくし達の美は永遠よ?」
「でも、ばれてしまっては」
「わたくし達の美に血縁と年齢は関係ないのよ?」
「でも、芸能人チャリティーゴルフはもう…」
「映える所には赴くものよ、美化さん」
「わたくし最近、肩が」
「腱鞘炎と言いなさい」
「それに、ホットパンツやミニキュロットですと…」
「あら、美化さん。泣いているの?」 
「ギャラリーから笑い声や、耳を疑う言葉が…」
「気のせいね」
「そうでしょうか」
「そうよ? 気にし過ぎよ。わたくしの携帯(*)は?」
「それが、先ほどからお尻の下に」
「まあ、わたくしとしたことが」
「少し、入れ過ぎなのではないかと」
「あら、こんなにセクシーなヒップは他にないのよ?」
「あの、お座りになった時、座高が」
「何を言うの。わたくし達の視線は常に高くなくては」
「ええ、そうでした」
「美化さんのバストは直す必要が出て来たみたいね」
「ええ、でもお金が」
「美化さん。そこは肩こりでしょう」




*(注釈)  お姉さまが二つ折りの携帯電話を御使用なのは経済的理由から
      ではなく、スマートフォンがデコレーションに排他的な製品で
      あり、専用カバーの便宜性を無粋とお考えだからです。



自由詩 アズ タイム GOズ バイ Copyright salco 2012-02-19 22:41:58
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