ジョナサンダイヤモンド
TAT
晴れた冬の日に
三年を暮らした家に荷物を取りに行った
がらんどうの一軒家は
かつて『近代漁業研究施設』として山師の祖父が立ち上げたブリキの看板だ
仏壇があり守衛控え室がありトイレが七個あるこのアジトで
俺はひとり真夜中に何編も何十編もフォーラムに詩を書いた
っけ
けれどもすっかり俺の匂いも消えた廃屋は
しれっと俺をお客様扱いして冷たいもんだ
ほら
旅行から帰って家の匂いを改めて感じて感慨する時ってあるだろう
要はあれの『取り返しがつかない』バージョンだ
俺はタバコとブーツとスーツで
じっと二分ほど錆びた椅子に掛けていた
その二分の間にジャックが登るべき豆の木も種から大樹になるようだった
俺はさてお目当ての立像に
『おひさ』と声を掛け
コレ車乗るか〜?
と
実際に発声してみたりした
けれどもこの女だけは
手放さないんだ俺は
神経科に通い詰めつつ仕上げたこの卒業制作だけは
そんな訳で宅飲み中の今も
辛うじてひとりぼっちを免れているナイス俺
ちなみに詩題は
架空の競走馬について書こうと最初思っていた
その名残です
まぁ新たに冠する上等な詩題も今ちょっと閃かないので
まぁ字数が多くて本当は登録不可だけどね
ジョナサンダイヤモンド