末路
まーつん

生きるのは痛い
北風の切っ先
酷暑のサンドペーパー
でもこたえるのはむしろ 肉体よりも 心

人々は 視線の剣を結びあいながら
肩を怒らせて 通りを行き交う
道端の植え込み 鳥たちは 素知らぬ顔で虫けらを啄む
互いを押しのけあって パン屑の施しを追いかける水鳥たち
首に縄を付けられて 虜囚の檻の中で肥え太る飼い犬たち

生きるのは痛い
たとえ怠惰なぬるま湯の中にいても
快楽に押し流される忘却の中にいたとしても
消して眠りに落ちることのない内なる目が
己の孤独を見つめている
どんなごまかしにも目を奪われない
内なるまなざしが
己の真実を見据えている

目的もなく
信念もなく
ただ 風にもてあそばれる木の葉のように
感情に流されて往き惑う心
本当の自分を見出せないまま
盲目となって欲望にまみれた両手を差し出し
きらびやかなショッピングモールをよろめき歩く
消費社会の奴隷
流行の服で着飾った
血色のいいゾンビ達

生きるのは快い
そう思えるのならば
どんな代価でも支払おう
そうたやすく口にする者たちの
どれだけ多くの足が
その狭き門を前にして
引き返してきたことだろう

みじめさの毛布はぬくぬくと心地よく
敗北に慣れた心が日陰の庵に甘んじる
そして時計の針は飛ぶようにまわり続け
ある日鏡の中に年老いた迷子となった自分を見出す
鏡の国の目新しい見世物に夢中になったまま
現実の世界に帰ることを拒み続けた
もう一人のアリス達の

あわれな末路



自由詩 末路 Copyright まーつん 2012-02-19 18:08:29
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