みちのり
そらの珊瑚

歩くのに疲れて
たどりついたところに
バスの停留場があった

時刻表に記された時間は
呆れるほどのまばらさだった
古めかしく
ところどころ錆びに侵食されて
そもそもちゃんと
機能しているのかどうかも怪しい
バスは
時刻表通りになんかこないし
あくまでそれは予定表なんだと
キジトラの猫が告げる

 
「もしかして猫バスが来たりして?」
「アニメの見過ぎだね」
「赤い字ばかりなんですね」
「赤い字は休日運行。
 ここは基本的に休日時間だけなんだよ、お客さん」


けれど
とても良く似ている
いつかどこかで通った場所に
とても懐かしい場所に

雨上がりなのだろう
銀色の糸は蜘蛛おばさんの手編み
透明の雫をつまかえている
どんぐりを意味もなく拾い集めて
ポケットに詰め込んでいる少女はたぶん私だ
 
「そのポケットは穴あきだよ。
詰め込んだそばから、こぼれ落ちているよ」


どこまで歩いていけるかな
みちのりは
速さに時間をかければ出てくるけれど
公式通りに
人は歩いていけるものじゃない

どのくらいの速さで
どのくらいの時間で
それを決めるのは自分自身で
歩くのを止めて
こんな風に猫バスを待っていることも
案外素敵なことなのかもしれない

不思議な夢を見た朝は
逃げていく蜃気楼を見送るような気分で
悲しくないのに泣いていた
胸の奥が
切なさに侵食されたようだった


自由詩 みちのり Copyright そらの珊瑚 2012-02-19 14:08:04
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