2006年〜2008年ごろのpoenique投稿作まとめ
ブルーベリー

夜明け


貰ったのは握手だった
嗚咽をもらすようなできた人間じゃなかったから
こっそりピンクの熊を抱きしめていた


変わろうと荷物を詰めながら
バンプオブチキンを聞いて
感傷に浸った日から


爪で睡魔を切り刻んだ日
泣きながら怒鳴り散らした日
水道水に皮膚を赤く染めた日
ストレスを鋏で切り刻んで笑った日
階下の空部屋に叫び続けた日
トイレで数時間過ごした日
何もせず街中をうろつきさまよった日
無実の人を尋問した日


ベッドの下まで現実逃避
言葉の羅列で正当化


それでも


消えない傷にもう1度誓いを
ピンクの熊にもう1度勇気を


2キログラムの怠惰を落として
ここにあるのは 雄弁な手


京浜東北線、大宮行き が
いつになく優しくホームに風を揺らした日


ようやく


嫌いだった、と笑った


(やみなべ投稿作)

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ブラックライトアップ




親愛が闇を満たす
睦言には、ふわり。
やわらかく突き刺さるものが紛れている。


けれど
それを聴く術がここにはない
(see→know,find,understand?)


恐怖に引き攣りながら
先だけ見上げようとしたら
静寂を満たした雄大な欺瞞の
かたい掌で撫でられて。


それでやっと


僕等は静かに
頭を下げて分離しました。





(即興ゴルコンダ投稿作)

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月刊「動物園」




3原色がカラフルに舞って
チープな、ぺら紙をべしゃべしゃにする。
美味しそうに頬張る箱の中は
今日も満員御礼です
頭が光ってます、こっちに向けないで下さい。
鳴き声は止まず 白鳥も正面衝突


何がそんなに面白いんだか
わからないけど今日もまた
小銭を持って雑誌売場
やっとのことで覚えたように
月刊「動物園」、指差し確認、レジまで走れ


角を削る生き物は
PTAとしての雄の欠点をばらまいていて
私はただ珈琲を淹れて
時々月刊「動物園」を仕入れに行くのだ。自転車で。





(即興ゴルコンダ投稿作)


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赤い枕で眠る女




赤い枕で眠る女は
長い髪を湯水のように垂れ流し
口紅は赤い(が
決して汚すことはない)
(顔を見せるように不自然な首の角度)
茶色い髪も睫毛も浮き出るように濃く
生き物でないかのように佇んでいる。


最初からこれは生きていなかったのだ。
手にした細長い綱は軽いが
ゆらゆらと震えたので
その先を辿ると発信源は自分の手だった、


赤い枕で眠る女の
口元は上がっている
幸せな夢を見ている。
背筋が凍るのはその神々しさに対して
畏敬の念をもつからだ


震えているのは寝る前に
母親世代の作家の文庫本を読んだからだ
全ては遠く現実味がなく読んだという認識しか残らない
無力感に膝をつく


赤い枕で眠る女の
目が今にも開いたら
きっと食事を始めるだろう


(即興ゴルコンダ投稿作、2007年8月)

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ドキドキ





青空の下
朝露に濡れながら
ふ、と寄り添う
別々の支柱に育った それ。


もぐ時は 冷静かつ 残酷に。


齧るときは大胆に。


但し。白い日なたの土は染みを残します。
気を付けましょう。



(やみなべ投稿作、昔持っていた自分のサイトに上げたもの)




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並木道



乾いた会話があちこちで。
優しさを遠ざけてるので
珈琲でも飲みませんか


重なる温度を確認し
一番町まで流れます
生クリームで塞いだそれで
ゆっくりと夢を見るのです


大量生産されたムードで
大量補完される私たち。


箒で集めた孤独の行方は
あの おばさんのみぞ知る。



(やみなべ投稿作、昔持っていた自分のサイトに上げたもの)



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自由詩 2006年〜2008年ごろのpoenique投稿作まとめ Copyright ブルーベリー 2012-02-19 11:03:41
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