ズー
四拍子をきざむ
うしろのチャイニーズに
聞いてみると
ほがらかな林くんは
鼻腔のおくで裸になった
君の汗、額から、
とがった顎まで垂れた、
あんていするために
球体になった、
たいえきに、
舌をつきだして
林くんの胸のまえで
四拍子に触れた
てのひらのなかで
らたいの女は
吸い込まれたにおいに
耳をよせている
私はひとみで
けさ、彼女を
脱がしていた、と
林くんは
うしろのチャイニーズと
きざまれた四拍子にあわせて
あかるい部屋のドアノブに瞳をかけた
鼻腔のおく、口に含まれたままの
彼女をころがし
おい、くちをひらくな。
中国のことばで
どなられて
泣いてしまう
1999年、
と2000年の、
夏のあいだ中、
ぼくらは夢のなかにいて、海亀をまっていた。
隣国のオイルタンカーが、座礁して
砂の一粒一粒が、
土踏まずにもひっついてくる
砂浜に座って。
夢のなかだってのに
オイルがまざった
砂は彼女の目のように、
ひかる
凪いでいる海と
夜がふけていくさきに
傾げたタンカーを
ひきあげにきた
隣国の作業員たちを
みつめていて
ありったけの絵の具を
ぶちまけたのさ、と
林くんは、海亀の
産卵期には美しくなった
砂浜から、そう書いた
かみきれと、彼の
うまれ年のワインボトルを流した。
はりつけられたまま
ぼくらの夢の色を
上塗りされた
タンカーの甲板でも
作業員たちは
働いているのだろうか
うしろのチャイニーズは
秋に引っ越して
誰にも聞けないでいる